今回は目標設定についてお話していきたいと思います。ただ、作業療法などの場面における患者様・利用者様に対する目標設定ではなく、自分自身、個人の目標設定についてです。自分の目標設定をしっかりできない人に、患者様・利用者様の目標設定は難しいと思います。自分自身への戒めも込めて書いていきます。
目次
- 結論
- 目標の主体者
- 具体的な内容
- 達成可能な目標
- 目標の細分化(スモールステップ)
- 目標の背景
- まとめ
1.結論
結論からいうと、
- 誰がその目標に向けて進んでいくのかを明確にする
- 目標設定の内容についての5W1Hを考えておくことで目標がより鮮明になる
- 数値的に表現可能なものは数値目標をつくり、期間や時期などを明確にする
- 目標は高すぎず達成可能なものにする
- 最終目標に向けて能な限りスモールステップを立てて、達成感・自己肯定感を感じられるようにする
です。この後具体的に掘り下げていきます。
2.目標の主体者
まず一番に考えなければならないのはその目標は誰のもので誰がするのか、です。この後の話も例にそって進めていきたいと思います。
例①「継続してブログの記事を書く」とすれば、書くのは自分です。誰か他人ではありません。
例②「体重を減らす」とすれば、減らすのは自分です。
例③「部屋をきれいにする」とすれば、自分か状況によっては一緒に住んでいる家族なのかもしれません。
例④「歩行自立」とすれば、おそらく主語は患者様でしょう。ただ、それに向けていろいろと考えていく主体は作業療法士などセラピストなのです。(多少作業療法的な例も入れていきます)
このように主体者・主語をつけるだけでも目標が少しずつ鮮明になっていきます。「当たり前のことだよ」と思うかもしれませんが、まず確認してみてください。
3.具体的な内容
目標自体がざっくりであったりあまりわかりにくいものであるとモチベーションがどうしても維持できません。より具体的に設定していくことで、達成のタイミングがわかり、モチベーションの維持につながります。これについては、5W1H(各々必要と思われる項目だけ参照)を取り入れながら行うと、自然と具体的な目標に変わっていきます。
例①「継続してブログの記事を書く」を具体的にしていきます。
Who(だれが)・・・自分
When(いつ)・・・毎日朝
Where(どこで、どこを)・・・自宅で
What(なにを)・・・記事を1つ
How(どのように、どうやって)・・・パソコンで
これらを入れると、「継続して、毎朝、自宅のパソコンで自分のブログ記事を1つ書く」となります。だいぶ具体的な内容になったと思いませんか。
例②「体重を減らす」を具体的にしていきます。
Who(だれが)・・・自分
How(どのように、どうやって)・・・ランニングをする
When(いつ)・・・仕事終わりに毎日行う、3か月の期間(3か月後を目標)
Where(どこで、どこを)・・・自宅の周辺(10㎞程度)
What(なにを)・・・体重を5㎏
これらを入れると、「毎日仕事終わりに毎日自宅周辺10km程度のランニングを行い、3か月後に体重を5kg減らす」となります。この内容はより具体的にしやすいですね。
例③「部屋をきれいにする」を具体的にしていきます。
Who(だれが)・・・自分と子ども
When(いつ)・・・毎週土曜日の午前中
Where(どこで、どこを)・・・こどもの部屋
What(なにを)・・・ほこりを除ける、おもちゃを整理する
How(どのように)・・・掃除機を使う、おもちゃ棚に片付ける
この目標は主語が複数でてくる場合もあるため目標設定の具体化が少し複雑になってきます。とりあえずこれらを入れると、「毎週土曜日の午前中にこども部屋の掃除片付けをする。こどもが部屋のおもちゃをおもちゃ棚に片付け、親(自分)がこども部屋の掃除機をかける」となります。さすがに目標としては長すぎるので、親(自分)の目標とこどもの目標を別々に設定して、それぞれの目標として共有できるとより理想的かと思います。
例④「歩行自立」を具体的にしていきます。
・・・と言いたいところですが、例③よりもさらに複雑になることと、ほぼリハビリテーションの目標設定のお話となるため次回とさせていただきます。上記例①~③のようにほぼ自分にしか関わらない目標ですら具体的にするのが面倒な中で人の目標を設定・共有することはとても難しいことだとわかると思います。
4.達成可能な目標
目標は達成可能でなければなりません。3.であげた内容は比較的達成可能なのではないかと思います。「ブログを毎日10記事書く」であったり、「体重を一ヶ月で10㎏減らす」といったような、不可能ではないかもしれなくても、地獄のような毎日を送ることになりかねません。また、モチベーションを維持していくことは困難で、おそらく途中で挫折してしまいます。一度挫折するとそこから這い上がるためには相当量の精神力を消耗してしまいます。達成可能性と継続可能性を加味して目標設定をしましょう。
”継続は力なり”です。
5.目標の細分化
上記3.で比較的スモールステップ化したような目標例を出しているのでそこまで細かく話しませんが、分かりやすい例②「体重を減らす」の場合について書いていきます。
例えば長期的な目標が、「1年後までに20kg体重を減らす」だったときに、その目標だけだと途中経過がわかりにくくモチベーションの向上につながりません。また、達成感も得られず、最終的に目標に達成できたかわかるのが1年後になってしまいます。
そのため、上記のように3か月で5㎏体重を減らすといったようなスモールステップを設けることで、モチベーションの維持・向上につながります。もし目標値を達成できなかったとしても、段階的な目標設定があるため、その都度目標の設定のし直しを行うことができます。また、目標に向けて行っている内容(この場合ランニングなど)についても修正できる機会を得ることができます。そしてなにより、達成感を得ることは自己肯定感の向上につながります。自分にポジティブな感情を持てるということです。
6.目標の背景
最後に書きますが、実はこの”目標の背景”がもっとも重要かもしれません。実際、目標の背景については設定した目標の文言には書かれない場合が多いです。5W1Hの”Why”にあたるところになりますね。例にそって書いていきます。
例①の「ブログを書く」については、
・副業での収益を得るため
・自分のことをまわりに知って欲しい
・誰でもいいから愚痴を聞いて欲しい
・文字を打つスピードを速くしたい
などなど、目標設定には理由があると思います。「このために目標に向けて頑張る」といったモチベーションの根底に位置するものなので自分の中でしっかりと持っていることが大切です。逆に、このWhyによっては立てた目標に疑問を持つ場合があります。自分でもそうですし、他人からみて疑問に思われる場合もあるでしょう。その場合は、目標をかえるべきかもしれません。いくらでも手段があるからです。
例②の「体重を減らす」については、
・モテたい
・○○を見返してやりたい
・一年後に自分の結婚式がある
・健康診断や受診で指摘されたから…
などなど、ですね。なんか下心が多くなりそうな目標ですが、別に表にでない目標の背景の部分なんてなんでもいいんです。とにかく目標達成への下支え、モチベーションにさえなれば構いません。健康診断で指摘されて減らせって言われるとモチベーションより絶望感が強くなります。(…はい、体重を減らせと医師から言われたのはわたしです。肝機能にやや悪い部分がありまして、、いやお酒は全く飲まないですよ?それでも悪いので、ちょっと頑張らなきゃと…)
例③の「部屋をきれいにする」についても、誰かが遊びに来たときにきれいにしておくべきとか、子どもが掃除整理整頓の習慣をつけれるようにという教育的な面もあるとかいろいろ背景は考えられそうです。
いずれにせよ、目標設定に至った理由は、目標設定をした人自身がしっかりと心にとめていく必要があります。これがなくなると目標が空中分解しかねません。
7.まとめ
- 誰がその目標に向けて進んでいくのかを明確にする
- 目標設定の内容についての5W1Hを考えておくことで目標がより鮮明になる
- 数値的に表現可能なものは数値目標をつくり、期間や時期などを明確にする
- 目標は高すぎず達成可能なものにする
- 最終目標に向けて能な限りスモールステップを立てて、達成感・自己肯定感を感じられるようにする
目標設定には結論であげた上記点が重要と思われます。ただ、5W1Hなどすべてにこだわるのではなく、自分が立てた目標を自分の中でしっかりと継続して持ち続けることが大切なので、途中で挫折してしまっている人はなんとなく過ごしている人の目標設定の一助となり、QOLの向上につながればと思います。目標があり、それに向けて行動することは生活の質を飛躍的に向上させることができます。
今回はここまでで、それでわっ!